2006年5月5日金曜日

「口伝」と「心授」(しんしょう)

 張老師との雑談の時です。同老師が言われるには拳が伝わるには「口伝」と「心授」があるとの話をされました。所謂「口伝」は長年老師に就かなければ開示されないが、その「口伝」を授かって拳が伝わっていると思っている人が多いが、これは大いなる誤りで「心授」まで行かなければ拳は絶対に伝わらないとの話をされました。

 「心授」とはどういう事かと言うと老師と常に一緒に居る事により老師の考えが分かるようになりその結果として拳も伝わるとの事です。張老師は武漢では主として散手をやっており、太極拳を実戦では使えない拳と見下していたのですが、北京に来て馮老師に挑戦し、敗れてからは馮老師を師として太極拳を学ぶことになった方です。張老師は北京に来てからは馮老師の近くに家を借り、職業も時間の自由が利く職業とし、朝から晩まで馮老師にお仕えしたそうです。しかもその年月は15年の長きに及び老師の考えている事は自分が一番分かっていると自負されています。このお仕えしている間に「心授」が自然に行われたとの事です。所謂太極拳だけでなく普段の生活に於いて雑用も含め、老師のお手伝いをしていく中で、老師の太極拳に対する考えが伝わり、結果拳も伝わることになるのです。

 従い、現在日本では色々な講習会がありますが、最初にどの流派を選ぶかの参考にするのには良いのですが、講習会では「心授」は行われない事は上記よりお分かり頂けると思います。

 この「心授」が行われるのには老師の側でお仕えしなければなりませんが、実際老師は誰でも寄せ付ける訳では無いので、老師の信頼を得る事が肝要です。老師の信頼を得るには、最低良く練習する事でしょう。更には老師を尊敬し、武徳を培う必要もあるでしょう。これらの事がなされて初めて老師の近くに仕え、「心授」が行われる機会が与えれられる訳です。