2021年7月31日土曜日

勁が見える人と見えない人

 最近様々な人に太極拳を指導してきて思う事は「勁が見える人」と「勁が見えない人」がいるという事です。通常は太極勁を数年練功してきて初めて勁が見える人が多いようです。勁が見え始めると私が打つ套路を見て動きが違うと言い始めます。かくいう私も最初は勁が見えませんでした。然し乍ら練功し始めてすぐに勁が見える人もいる事が分かりました。小生の太極会では今迄3人にそのような人にあたりました。勁が見えても即座に上達する訳ではありませんが、上達の速度は速いと思われます。というのは常に自分の動きに納得がいかず自分で試行錯誤して修正し続けるからです。この勁が出ているかどうかは初心の間は非常に重要なコーナーストーンになります。小生が北京で太極拳を習い始めた頃は馮志強老師の勁が全然見えませんでした。一方張禹飛老師の勁はハッキリと見えました。当時馮志強老師の套路は暗勁で打っていたものが多く、その為勁が見えにくいというという訳です。張老師は套路を明勁で打っておられた為に勁が良く見えたという具合です。張老師は当時、馮志強老師に習った人達の多くが明勁でもなく、暗勁でもない、勁が出ていない人が多いのを苦々しく思って居られました。その為小生には楷書の混元太極拳を明勁で伝授したのでした。私が現在楷書の混元太極拳を広めているのも以上のような理由があるからです。皆さんも各招式の勁を正しく理解し、まずは明勁で套路を打つ事から始めて下さい。そうすれば上達の速度も上がるでしょう。

2021年7月2日金曜日

松(ソン)と緊(ジン)

 太極拳では放松(中国語ではファンソンと発音します。)が非常に大事と言われています。その理由は放松ができるようになると発勁が強力になり、勁が整ってくるようになるからです。然し乍ら多くの方は自分では放松が出来ていると思っていても出来ていない事が往々にしてあります。この放松を体得するのは非常に難度が高いと思われます。然し乍ら陳式太極拳(ここでは陳発科の系統の陳式太極拳の事)では套路の練り方にこのファンソンを体得する方法が埋め込まれています。それは放松と緊張を今後に繰り返す事によって放松を深めていくのです。これを松(ソン)緊(ジン)を繰り返すと言います。初心の内は体が緊張していますから、この放と緊の振れ幅が大きくありません。然し乍らこれが少しずつこの振れ幅が大きくなっていくのです。松(ソン)も深く、緊(ジン)も深くなり、最終的には素晴らしい拳となっていくのです。これは身を持って体験していますし、生徒を見ていてもその過程がよく見て取れます。一方楊式太極拳を見ていると終始放松(ファンソン)の太極拳だと見て取れます。ただ、いきなりそこに到達する事は容易ではなく、何らかの要訣があるのでしょう。さもなければずっと緊(ジン)で套路を打つ事になり、成長が見込めません。ここはその門派に入らなければ分からない処です。制定太極拳等は伝統拳のグランドマスターが居られない為これらの要訣を欠いているのではないかと推測されます。その意味ではどの太極拳でも良いので伝統拳をやる必要があるのではないでしょうか? 陳式太極拳ではこのソン、ジンに呼応するかのように開合があります。これは動作や形の開合だけではなく、意念の開合が重要な要素となってきます。このソンジンと開合が基調となって体を作り上げていく事になります。