2017年8月2日水曜日

意念 中国武術の精華

意念も私が太極拳を通じ初めて出会った新しい概念でもあり、又素晴らしい技術でもあります。太極拳は意を鍛える武術ですが、意を鍛えるとどのような事が起こると思われますか? 一つは意で相手を動かせるようになるのです。但し、これには幾つかの条件があります。
1.まず相手が意を出して来た時に限ります。然し、武術をやってきた方なら殆どの
  場合が攻めて来る時に強い意が出ます。又喧嘩好きな人も強い意が出てきます。
2.こちらの意がある程度強い事が必要です。
3.こちらから相手を攻めずに、相手に従う気持ちを持つ。
この3は何処かで聞いた事があると思いませんか? そうです。太極拳の要諦が描かれた「太極拳経」の「捨自従人」(自分を捨てて相手に従う)です。自分を捨てて、相手に従うとは動作の事だけを言っているのでは無く、意念に就いても言及していると考えられます。全ての思いを捨て、相手に従う気持ちを持てば、相手の意念が出てくる処が良く見えてくるという事です。
話を戻して意を鍛えるともう一つには意の反応が速くなってきます。人と対した時に意の反応が速い事はこちらの動きに余裕が出てくる事になります。尊敬する北京陳式の陳発科老師は相手が速い動きの時は自分も更に速く動かれたそうですが、これは意を鍛えているからだと思われます。
三つ目に相手の意が動く瞬間が分かるようになる事です。意の感受性が増すからです。空手をやっている時より、非常に相手の動きが見えやすくなり対処しやすくなってきます。意の動く瞬間が太極です。静動の機、陰陽の母が太極拳経では太極と呼ばれています。意が動いてしまえば動となり、陰陽が分かれた状態になりますが、動いていないけれども。その機を含んだ状態が太極という事になります。実際元々他の武道の高段者が長らく組手を行っていないにも係わらず私の下で太極拳をやっていて組手を再開したら、強くなっていたという事が起こっています。これは太極が捉え易くなった結果と言えるでしょう。
以上が意を鍛えたら出来るようになる事の例です。従い、太極拳は素晴らしいと言いたい処ですが、実はこれは太極拳だけにある事では無いと思えるのです。意念を重視するのは私が知っている限り多くの中国武術の内家拳(太極拳、形意拳、八卦掌等)に当てはまるという事です。もっと正確に言えば内功を練る内功武術に当てはまると思います。例えば少林拳等は一般には外家拳に分類されますが、私が知っている方の少林拳は内功がある少林拳で、ここでも意念が言われています。私が知っている意念の効果は上述した通りですが、他の拳では意念を練る事による別の効果もあるかもしれません。従い、この意念は多くの中国武術に存在する中国武術の精華と言えるかもしれません。