2001年4月8日日曜日

太極拳の速度

 太極拳のスピードはどうしてあんなに遅いのか?又あんなに遅い速度で武術として使えるのか?との質問を度々受けるのでここに小生の考えを纏めておこうと思います。
  1. 太極拳のスピードはどうしてあんなに遅いのか?

    まず最初に太極拳は気功であり、気功を通じて威力を獲得するのです。この獲得された威力を功夫(コンフ)と言いますが、この気功はスピードが速くてはできない代物です。というのも気功は意念(強い意識)を使います。一つ一つの動作に意念を丁寧に使っていき、散漫な動作が無いようにします。こうして練っていけば気が全身に行き亘り健身効果が得られます。又武術的には意が鍛えられ意の強さが高められ、意の反応も高められると言われています。

    その次に太極拳は武術ですから力を獲得する必要があります。太極拳で使う力は勁と言って通常の筋力とは違います。通常の筋力は「拙力(zhuo li)」と言って排除されます。この勁を各招式で出していく訳ですが、この勁は筋力を使わず、丹田の力を使います。正確に言うと筋力は使わないのではなく、力の伝達としては使いますが、力を発する源としては使わないという事です。筋力が力を発すると丹田の力を発する邪魔になるので出来るだけ力を抜いてリラックスさせ(これをファンソンと言います)丹田の力を最初の内は絞り出すように発します。このように力を出す場合初期の頃は動きが速くてはこの力が出ず、踊りになってしまいます。ただ上級になってくると自然と勁が出て来るようになり、素早く動く方法で套路を打つ練習も行います。

    第三にこの勁をゆっくりと練り込んでいくと勁が徐々に大きくなってきます。即ち力が増大してくるという事です。従い、熟練者の套路は見ているだけでその勁の大きさが伝わってきます。逆に初心者の套路は勁が全く見えない場合が多いです。
  2. 太極拳はあんなに遅い速度で武術として使えるのか?
     太極拳のゆっくりとした速度はあくまで套路においてであり、実戦は又別物です。上にも書いたように太極拳は意念を鍛え、又推手等で聴勁も鍛えるので、相手の動きの察知も素早くなり、相手の動きが速ければ相手に合わせ速いスピードで動けるようにもなるのです。小生が教えて頂いた朱鋼老師は推手の時は凄く重く遅いのですが散手(自由組手の様なもの)では驚く程素早く動かれるのでビックリした事を覚えています。小生はそこまでの高いレベルに行っているとは言い難いですが以上が太極拳の速度に関する小生の考える処です。