2020年8月1日土曜日

北京陳式の共通点と方向性

皆さんには北京陳式とは耳慣れない言葉と思いますが、そこから御説明しましょう。北京陳式とは陳式太極拳の嫡流でその名を広めた陳発科老師の拝師弟子、孫弟子等が演じる太極拳の事です。従い、陳氏宗家を引き継いだ太極拳と言っても良いと思います。陳氏宗家の太極拳は北京をメッカとして広まっていきました。北京陳式で練習する套路は新架式と呼ぶ人も出てきており套路は全国的に広まった感があります。然し乍ら套路が北京陳式の全てではなく、北京陳式全体は拝師の弟子が継承していっています。というのも陳発科老師は陳式太極拳を陳一族に閉じ込めるのではなく、陳姓以外にも開放したからです。ですが誰でも良い訳ではなく当然陳発科老師のお眼鏡にかなう人物が引き継いでいく事になりました。陳式太極拳には陳発科老師の出身地では地域で伝承される太極拳がありますが、北京陳式はそれとは多少趣を異にしている印象があります。尚、小生が属する混元太極拳も北京陳式に属します。北京陳式では毎年北京で大会が開かれていました。私が北京にいた時は年2回、大会がありました。当時の北京陳式の会長は馮志強老師でしたが、現在は陳照圭老師の弟子で後に馮志強老師の弟子になった謝志根老師です。
北京陳式の老師方の共通点としては現役時代は太極拳を職業にする事が無く、皆さん自分の職業をお持ちで、引退後に太極拳を本格的に教える方が殆どです。従い、太極拳を商業ベースに乗せる必要も無く、昔ながらの教え方で付いてくる人のみを教えるといった具合でした。当然の帰結として対外的な宣伝は無く、あまり一般の人々に知られる事はありませんでした。
小生が考える北京陳式の方向性は気の流れを重視するという事ではないかと考えています。例えば斗勁(とうけい)ですが、北京陳式にはあまり斗勁を用いる人はいません。小生は陳発科老師が斗勁を陳式太極拳と思う人がいるが、それは陳式太極拳では無いと否定されたという話を馮志強老師より伺いましたが、要は気の流れという意味では流れをスムーズにする方向とは逆なので否定されたのではと推測しています。又金剛捣碓も気の流れを考えて2度変更したと聞いています。套路は要は身体の開発を目的としているので、単に招式(ワザ)を組み合わせたというより、その繋ぎの動作も含め気の流れを重視し身体を開発していくように組み立てられ、最終的には混元太極拳の原型に辿り着いたと考えるのが小生の結論です。
これらの結果として北京陳式は陳発科老師の出身地で地域で伝承される太極拳と趣を異にしてきたのではないかと思います。どちらが良いとか悪いとかの話では無く、風格が違ってきているという事だと思います。禅でも達磨大使から伝承されてきましたが、臨済禅と曹洞禅で風格が異なるのと同じです。